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反社チェックとは?「反社会的勢力の定義」と反社チェックの難しさ

反社チェックの難しさは調査作業そのものにあるのではなく、実施するしないを含めて、チェックを適切な範囲で実施できるか否か、にかかっています。

企業の担当者の多くは、おそらく「会社として反社チェックを適切な方法でおこなうように」であるとか「わが社として反社チェックのマニュアルを整備しろ」といった指示を受けて、よく分からないままにインターネットで検索したり条例・法令にあたったりしているのだと思われます。

しかしながら、彼らはほどなく重大な困難に直面することになります。なぜなら、適切な反社チェックがどのようなものかを理解するためには、以下の二つの要素が必要なのですが、いずれについても明確な定義・基準が存在しないからです。

  • 【必要な要素1】反社会的勢力の明確な定義「反社会的勢力とは?」
  • 【必要な要素2】適切な反社チェックの基準「反社チェックの方法とは?」

要素1の定義が明確でないと、チェックすべきそもそもの対象が明確でないということになり、チェック自体の意味がなさなくなります。また、要素2のなにをどこまでチェックするべきかの基準が曖昧であれば、これまたチェックの実効性が失われることになってしまいます。

どちらかが欠けても反社会的勢力の排除はできないことになってしまうのです。

「反社会的勢力」の定義について

まず確認したいのは、反社会的勢力とはどのようなものか、法令上の定義(というより公的文書における定義)で、それは以下のようなものです。

[1]暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、[2]暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、[3]暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。

(※太字・下線強調、括弧番号付けは引用者による)

この文章は平成19年6月に政府の犯罪対策閣僚会議にて取りまとめられた『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』、通称『指針』と呼ばれるものの一部で、反社会的勢力の定義にあたる部分です。
(※)同『指針』は各省庁のWebSiteにて取得可能で、例えば法務省のサイトにアップロードされていますので、ご確認ください。
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji42.html

犯罪対策閣僚会議にて取りまとめられた『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』

この『指針』は企業がおこなうべき反社会的勢力の排除について、企業としてのあるべき姿・保持すべき基本理念を政府が示したものです。ですので、どの範囲までを反社会的勢力とみなすのか、政府の考えが明記されています。

(※ただし、『指針』はあくまで政府見解のようなもので法令ではありません。企業の対応がこの『指針』にそぐわないものであったからといって直ちに罰則を受けるものではなく、法的拘束力はありません。しかしながら、たとえば民事訴訟において取締役の善管注意義務が問題とされるようなケースでは、この指針に則した行為をおこなったか否かが争点となることはありえます。)

さて、肝心の定義内容ですが、[2]が属性要件による定義、[3]が行為要件による定義です。その2つの要件を満たす一般的な定義が[1]ということになります。ひらたく言うと、以下のような個人や組織が反社会的勢力である、ということになります。

  • (1)暴力を用いたり、脅したり、騙したりして金儲けをおこなう集団あるいは個人
  • (2)上記の集団に属していなくても、同じような暴力的あるいは不当な要求をおこなう集団あるいは個人

行為要件における「反社会的勢力」の定義

両方とも同じことを言っているわけですが、ここでの肝は『指針』にある「行為要件にも着目することが重要である」という部分です。

一般的な理解では反社会的勢力などと言うと、刺青を入れた暴力団員やら、街宣車に乗って企業恐喝をおこなう右翼(正確には右翼活動を隠れ蓑にする「似非右翼」といいますが)など、見た目からして「堅気ではない連中」といったものになるかと思いますが、そのようなステレオタイプの反社会的勢力は極めて少数派です。

特に企業に接近してくる連中は見た目でそうとわかるような風貌ではないし、ダミーの法人を仲介させることで見た目上まったく通常の商取引を装うこともありえます。

ですので、政府として「属性だけでなく行為についても注視しなさい」と言っているわけです。分かりやすく言い換えると「何々組といった分かりやすい看板を掲げずに見た目が全く一般的な個人・組織であっても、そういった連中と同じような不当な手段で金儲けをおこなう連中は等しく反社会的勢力であり、企業として排除の対象となる」ということになるでしょう。

排除となる反社会的勢力

もっと砕けた表現を用いるなら「暴力団と暴力団と同じことをする連中」ということです。

行為要件における「反社会的勢力」は範囲が広くなる

こうなると、反社チェックをおこなうにあたって、「暴力団であるか否か」と「暴力団と同じことをする(した)か否か」という2つのチェック項目が必要であることになります。

ここでいう「同じこと」とは上記の定義から、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益」を得たものか、あるいは「暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求」のことですから、簡単に言うと「暴力、脅迫、詐欺により金儲けをしたか(しようとしたか)否か」ということになります。

どうでしょう?

2番目の「暴力団と同じことをする連中」という定義が意外と広いものであると思われた方は多いのではないでしょうか?この定義を当てはめると、たとえばワル仲間を集めてオレオレ詐欺をおこなうチンケなチンピラ(表現が古いですが…)も暴力団と肩を並べる立派な反社会的勢力ということになるし、詐欺商法によって利益をあげる悪徳企業も反社会的勢力になりえるのです。

範囲が広くなるからこそ反社チェックは難しい

「暴力団かどうかはともかくとして、行為要件はかなり広い解釈が可能じゃないか。相手がわが社にそういった要求をしてくるならともかく、隠れたところでやられたらこっちは判別がつかないぞ。自社の姿勢いかんで排除できるかできないか決まるということじゃないか!」

このように思われるのが正直なところなのではないでしょうか?

政府は行為要件に関連した定義について、これ以上のことは言っていません。ですので、反社チェックにおいて対象者の過去の何らかの法令違反行為が確認された場合、その行為によって対象者が反社会的勢力とみなせるか否か、について企業は独自の判断が必要になってくるのです。

これが御社の反社チェック体制を難しいものにしている大きな要因のひとつなのです。

反社チェック体制

以上のように、反社チェックにはまず反社会的勢力の定義に関する上記の難しさが存在します。企業が(少なくとも反社会的勢力の排除をしていると公言しなければならない社会的責任を負う企業が)反社チェックを適切におこなうためには、まず自社内で「排除すべき反社会的勢力とはどのようなものか」の共通認識を構築し周知する必要があるのです。

是非、御社でも「自社が排除すべき反社会的な集団・個人はどのようなものをか」についてご検討をいただければと思います。適切な反社チェック体制の第一歩はそこからはじまります。